定年後も元気なシニアライフを楽しむ秘訣は充実感にあり!スキルシェアサービスを活用し、これまでの人生経験をニッチなサービスとして出品している大先輩の体験談

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定年後の生活について不安に感じる方もいる一方で、退職後も自分にしかできない新たな活躍の場を見出し、活き活きとした毎日を過ごす方々もいる。ココナラで活躍中のラズモネさんは、公文書作成のスキルや刑務官としての経験を活かし、「刑務所のことお話します」というユニークかつニッチなサービスを出品している。

趣味に時間を使ったり家族と過ごす時間を楽しんだりという穏やかな毎日も魅力的だが、「人から必要とされる」ことは何歳になっても嬉しいものであり、生きがいや刺激を与えてくれる体験である。長年の勤務で得た経験やスキルを活かせるスキルシェアの場は、定年後の穏やかな毎日にたくさんの彩りを与えてくれることだろう。

100万人に売れなくても100人に売れる可能性があれば、個人間取引(C to C)は興味深い発見の連続である。シニアライフの新たな楽しみ方を実践的に教えてくれる、ラズモネさんのストーリー。

 

経歴:大学で犯罪心理学を学び、法務省で定年まで勤務した後、現在はシニアライフを満喫中

敗戦で引き揚げてきた父親が開拓した土地に生まれたラズモネさんは、豊かな自然に囲まれながら伸び伸びとした幼少期を過ごしていた。

手作りの弓矢で野ウサギを追いかけて遊んだことは、数十年経った今でも鮮明に記憶している楽しい思い出のひとつだ。

時は流れ、進路選択の必要に迫られた。親や教師には何も言われなかったが、「人間を知るための心理学を学んでおけば、どんな職業でも通用する知識が得られるだろう」と考えたラズモネさんは、大学で心理学を専攻することにした。

在学中は「犯罪心理学」を学び、卒業後は「刑務所」で職を得て、法務省で国家公務員として働くことに。刑務所での主な業務内容は受刑者の心理テストや面接をすることだったが、その後は刑務官としても勤務し、刑務所長なども歴任した。

刑務所という特殊な環境のため、気性の荒い受刑者たちに恫喝されることも多かったが、彼らの特性を理解するように努め、身の安全に注意しながら多くの経験を積んだ。

責任ある立場になると自分の裁量で多くのことを決められるようにもなり、刑務所での仕事にも大きなやりがいを感じていた。

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法務省で勤務していた際に最も苦労したのは、公務の世界における「文書主義」を身体に徹底的に覚え込ませる作業だった。数ある省庁のなかでも、法務省は特に「文書」に厳しい所と言われているそうだ。

ここで「文書主義」について少し説明しておこう。

文書主義とは、主に行政機関で用いられる用語である。行政機関においては、意志決定に至る過程や事業の実績を確実に記録し、後から検証できるように保管しておくことが義務付けられている。事務および事業の内容を記録する文書は「公文書」と呼ばれ、

記載事項に抜け漏れがないか、何重にも厳しく確認された後、保管される。公文書作成には様々なルールがあり、「公用文用字用語例集」に記載された約1万語の用例に則って正しく、過不足なく、分かりやすく記述しなくてはならない。

文化庁のウェブページを見てみると『No.21 公用文の書き方資料集』というものが閲覧できる。

http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/21/21.html

例えば、「支障を来す」の「来す」は漢字を使わずに「きたす」と表記すること。

「昨年末」と書くよりもできるだけ「昨年12月〇日」のように明確に示すこと。

このような細かなルールが幾つも定められているのである。表記ルールから少しでも逸脱していれば、正しくなるまで修正が求められる。フォーマットや表記の正しさ、分かりやすさ、読みやすさ、といった多くの要素を満たさなくてはならないのだ。修正の際は何度も呼び出され、決裁が下りるまでに半年かかることもあったそうだ。以上のような厳しさが求められるのが「公文書」の世界である。

ラズモネさんは、この公文書作成に長年携わってきたのだった。法務省での勤務時代、上司となったのは検察官や出向してきた裁判官。検察官や裁判官はいわゆる「法律家」であるため、裁判で争ったり、法律を作ったり、全国の所管組織に指示命令を発したりするのが主な役目である。

それらの命令はすべて「文書」を介して行われるため、少しの間違いが大問題になる。

法廷での争いや法律の制定、業務処理にまで多くの問題が生じてしまうのだ。正しい公文書作成のスキルを磨くことは、法務省の職員にとって最重要事項とも言えるだろう。

公文書作成に関わり始めた最初の頃は、A4サイズの用紙1枚に50箇所の修正指示をもらうこともあった。幼少の頃から国語が得意で、文章を書くことにはそれなりの自信があったラズモネさんであっても、公文書作成における独特のルールを覚えるためには、全く別の視点からの新たな修行が必要だった。

上司に厳しく鍛えられた結果、いつしか、公文書作成のプロともいえるスキルが身に付き、自身の部下や若い職員にも、正しい書き方の指導をする立場になった。

そして定年を迎え、これまでのスキルを活かす道をココナラに見出したラズモネさんは、竹炭製造・販売の新たなビジネスにも挑戦しながら、第2の人生を満喫している。

 

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活用のきっかけ:最初は購入者として利用を開始した後、自らも出品を決意

インターネットでたまたま見つけたのがスキルシェアサービスのココナラだった。

定年後に始めた竹炭製造・販売に使用するためのマスコットキャラクターを描いてくれるイラストレーターやデザイナーを探していたことがきっかけだ。

その後、自分でも出品してみようと考え、「自分にできることはなんだろう…」と思いを巡らせ、これまで培ってきた公文書作成、および文章作成のスキルを活かすサービスを出品することを思いついた。

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出品サービス:文章作成・校正サービスに加え、独自の経験もシェア

まずは「文章校正」のサービスを出品した。公務員としての文章を鍛えられてきた経験を活かし、公文書の校正に絞ってみようと思いついたのだった。公文書の書き方は通常の文章作成とは異なる緻密さが求められる。しかし突き詰めて考えれば、それは国が定めた常用漢字表に則ったものであるし、一貫した表記ルールに基づいて記述される「正しい日本語」でもある。

「国家機関や地方自治体に出す文書に自信が持てずに困っている人」

「自分の書いた書類に不備が無いか確かめたい人」

そのような人々の存在を感じていたので、「公文書のプロ」として出品を開始した。最初に、サービスが売れたときのドキドキした気持ちは今でも時折思い出す。

5時間かけて作業をすることもあるが、それでもサービス提供を続けているのは「人助けをしたい」という熱い想いから。ココナラの出品で月ごとに得られる合計収入は、5千円程度だが、得られる報酬以上の価値がそこにはある。

書くことに困っている方々の助けになれたという実感こそがやりがいであり、提供したサービスに感謝してもらえたりすると、非常に嬉しい気持ちになる。

「自分にできること」を他にもいろいろと考えた結果、刑務官時代の経験をシェアするというニッチなサービス提供も思いついた。一般の人が知らない情報には大きな価値があることを実感している。

・刑務所のことをお話します元職員なので,嘘・偽りはありません。

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副業での気づき:いろんな人々が自分のスキルを求めてくれている

中学生から高齢者まで、購入者の年齢層は広い。

男女は問わず多くの方が購入してくれた。用途としては、就職のためのエントリーシートや論文、面接試験対策、というものが多かった。少し変わった依頼では、学校に出す宿題、論文の添削などもあった。

社長から社員あてのメッセージ作成や、一流企業、国際機関からの依頼なども経験した。

利用者を観察してみると、意外にも多くの人が「正しい日本語」を求めていることに気がついた。

 

取引エピソード:日本語に自信が持てない人や刑務官を目指す人からの依頼

これまでに経験した印象的な取引は2つほどある。

1つは帰国子女の方からの依頼。海外生活が長いためか、日本語に自信が持てなかったようで、実際に確認してみると基本的な誤りが目立っていた。日本の大学に出す文書に自信がないという相談だったので、基本的な表現の誤りを中心に修正やアドバイスを行った。自分の提供したサービスが「正しい日本語」を知るきっかけとなれば、その方の今後の人生にも大きくプラスになるだろうと感じ、充実した気持ちになった。

もう1つは、公務員の情報サイト運営会社からの依頼が印象に残っている。そこでの依頼は、刑務官に関するコラム作成。巷に溢れる刑務官や刑務所の情報は不正確なものがとても多いので、少しでも正確な情報を提供できるようにと願いながら、分かりやすい内容に仕上げた。

世の中の人々や刑務官を目指している方々に正確な情報を届けられたと思うと、このコラム作成は大きな満足感が得られた。

 

今後:スキルシェアで世の中への恩返しをしながら、故郷の竹林を再生する!

現在出品中のサービスを通じて、今後も困っている方々の役に立ちたいと願っている。

「税金で雇われ文章を鍛えられた私が世の中に恩返しする意味合いもある」ラズモネさんはそう語ってくれた。

年金生活も始まった今、ラズモネさんは新たな挑戦もしている。竹炭製造・販売などのビジネスを始めたのだ。ココナラハンドメイドには竹の工芸品や清潔な竹炭も出品中だ。

竹炭ハンドメイド

handmade.coconala.com

 

「故郷の荒れた竹林を京都の竹林のように復活させる」という夢を叶えるため、3か月ほど前にはホームページを公開し、オンラインショップも始めた。手入れをした竹で作った作品が売れて収入になること。それと同時に竹林も美しく生まれ変わっていくことが、今は何よりも嬉しい。

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編集後記:定年後のシニアでも起業できること。そして自らのスキルを活用して新たな収入源を自ら開拓できるという実体験は、これから定年を迎える世代にも大きな勇気を与えてくれることだろう。ラズモネさんの「年金倍増計画」がどんな広がりを見せてくれるか、今後も目が離せない。(広報:古川)

 

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